東京地方裁判所 昭和52年(ワ)9971号 判決 1980年2月18日
原告
岩本泉
右訴訟代理人
関根栄郷
外一名
被告
成美商事株式会社
右代表者
趙顕玉
右訴訟代理人
遠藤雄司
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は、原告の負担とする。
事実《省略》
理由
一〜四<省略>
五さて、本件消費貸借契約上の利息は年一割五分、遅延損害金は年三割の各割合によるものであるところ、抵当権設定登記上利息は月0.79%、遅延損害金は年18.25%の各割合による旨記載されていることは前認定のとおりであるが、このように、利息・遅延損害金の約定利率が抵当権設定登記の記載を超えるものである場合、たとえ登記上の利率により算出された利息・遅延損害金及び元本に相当する金員が支払われたとしても、それは債権者である抵当権者にとつて契約上の債権の一部弁済にすぎないから、抵当権設定者又は抵当物件の第三取得者は、抵当権者に対し、当然には被担保債権の消滅を主張することはできない(最高判(二小)昭和四二・一二・八民集二一巻一〇号二五六一頁参照。)。また、<証拠>からすると、被告は、原告に対し、前記各供託金は債権の全部の弁済に足りないから遅延損害金及び元本の一部に順次充当する旨意思表示し、留保付きでその還付を受けたものと認められ、右認定に反する証拠はないから、被告主張のとおり前記各一部弁済金及び各供託金をもつてしても利息・遅延損害金及び元本の債権の全部の弁済に足りないとすれば、右各供託金について、各供託の日に債権の一部に弁済充当されたものとしての効力を生ずることになる(最高判(一小)昭和三八・九・一九民集一七巻八号九八一頁参照。)。
そこで、前認定の弁済期(昭和四九年七月二三日)、利息(年一割五分)及び遅延損害金(年三割)の割合により、前記各一部弁済金を利息・遅延損害金及び元本の順に法定充当すると、別紙計算書(三)のとおり、昭和五〇年一〇月三〇日現在、残元本金八〇一万九九六六円及び遅延損害金一六三万四六〇三円の合計金九六五万四五六九円の債権があつたことになり、同日原告のした金七五〇万円の弁済の提供は債務の本旨に従つたものとはいえず、被告の受領拒絶は正当であり、以後における遅延損害金の発生も止め得ないものである。また、右計算書のとおり、昭和五二年一〇月一四日現在、元本金八〇一万九九六六円、遅延損害金六三四万一一一四円の合計金一四三六万一〇八〇円の債権があり、原告の各供託金をもつてしては右債権の全部を弁済するに足りず、右各供託金につき被告が債権の一部弁済として受領する旨の留保付きで還付を受けたことは前認定のとおりであるから、これにより一部弁済充当の効果を生ずることになり、その結果、右計算書のとおり、昭和五二年一〇月二一日現在、金四四六万二〇二四円の元本債権が残存することになる。
六以上のとおり、本件消費貸借契約上の債権は完済されておらず、本件抵当権の被担保債権はなお残存するのであるから、その弁済を原因とする原告の本訴請求はいずれも理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(久保内卓亜)
別紙<省略>